発売からずっと自分のTLでは話題になってたのだけど、
近所の本屋では壊滅状態で、なかなか手に入れられなかった一冊。
やっと購入できたのでゆっくり読もうと思ったら、面白すぎて一気に読破しちゃいました。
……いや、一番笑ったのは帯の
「そもそも野尻さんがちゃんとしたSF作家だったというのは驚きだった。
――――ドワンゴ代表取締役 川上量生」
でしたが。
書店でリアルに吹き出しちゃったよ!
自分にとっては、ずっとクレギオンのセンセイなんですが、
たしかに、ニコ動でしか知らない人だと、そう思いますよね。
わかります。
ちなみに5年ぶりの新刊だそうです。
表題作の『南極点のピアピア動画』は2008年頃にSFマガジンに掲載。
これだけ、リアルタイムで読んだことがありました。
月に彗星が衝突した余波で、関わっていた月探査プロジェクトが潰えてしまい、ついでに恋人にまで去られてしまった大学院生が、ピアピア動画というサイトをきっかけにして、宇宙へ恋人を連れて行くという夢を、多くの人々の力をかりて達成しようとする話。
2つめの『コンビニエンスなピアピア動画』は、
片田舎のコンビニで偶然発見された、とある蜘蛛が発端となり、ピアピア動画の技術集団の手によって、思いもよらぬ計画が進んでいく話。
3つめの『歌う潜水艦とピアピア動画』は、
ザトウクジラの群れの研究に情熱を燃やす研究者が、国民的大人気のボーカロイド「小隅レイ」の力を借りて、プロジェクトを実現させてしまい……そして。という話。
最後の『星間文明とピアピア動画』は……ナイショです(笑)
ぜひ読んでみてください。
わかる人にはすぐわかりますが、つまりニコニコ動画と初音ミク。
もっといっちゃうと、
ニコニコ技術部を題材にした小説ですね。
さすが「先生仕事してください」コメの第一人者。
筆は遅いですが、ハードSFに定評がある野尻先生作だけあって、綿密でしっかりとしたSF描写が光ってます。
それでありながら、読み終わった後に感じるのは、清涼感と心地よさ。
そして、未来へのたしかな希望。
きっとそれは、技術への信頼と、なにかをやりとげることの賛美が根柢にあるからなんだと思います。
登場人物が、みなどこか職人肌なんですね。自分のやることに誇りをもっている。
こういう題材だと、ネガティブ要素でコーティングされがちなんですが、これまたインターネットというインフラへの全面肯定が、独特な作風を生み出してます。
つまりこれ、完全に初音ミクファンと、ニコニコ技術部な人へ向けて書かれてるよね(笑)
楽観しすぎなところもありますが、案外こういうものかもしれないという、リアリティもまたあったりして。
そこまで詳しくない自分でも、元ネタの数々にニヤニヤしてしまったくらいなので、
詳しい人が見たら、もっとヒドい(褒め言葉)んだろうなぁと。
小隅レイの名前からして、そうですもんね。万人向けというわけではないですけど、ありがちな表面だけネットネタ乱発なものとは、一線を画してます。
そのボーカロイド「小隅レイ」の元になった、初音ミクって、ずっと追ってる人ならわかると思いますが、SFな存在そのものなんですよね(2008年に星雲賞自由部門に選ばれたのは流石だった)。
ちなみに、事実は小説より奇なりというか、すでに
金星方面へも旅立っている ので、明日地球が滅んでも、彼女の存在は残ります。SFですね。
そんな初音ミクがニコ動で有名になり始めたころ、もっとも多く歌われた題材は、
そのまま彼女という楽器をモチーフにした、「歌うことそのものの楽しさ」でした。
そして多くの人は、ミクの向こうにある「未来」もいっしょに聞いてたんですね。
彼女だけずっと特別扱いされ、やたら技術系の人間にモテるのも、そういう部分が大きいのではないかと思います。
初期の名曲にして、いまでも人気がある『ハジメテノオト』は、まさにその象徴かなと。
いまだに、これを超えるミク曲に出会ってないです。
なぜこれを紹介するのかは……やっぱりナイショで(笑)
いやでも、読んで一番ハッとしたのは、本文中に出てくるボカロ耳についてのやり取り。
ミクのたどたどしい声でも、ずっと聴き続けてると脳内で勝手に補正されて、ちゃんとした歌として聞こえてくるみたいな現象を揶揄った言葉なんですが。
考えてみると、若者がミク曲を聞いて脳内で補正される状態って、上の世代とはまた違うのかも。
自分はいわゆるFM音源な曲を聞くとリラックスしやすいんですが、ボーカロイド世代にとってはミク曲がそうなる可能性もあるのだなぁと。
実際に、音楽がどのように聞こえるかって、言葉では説明できても感覚的なものを詳細に伝えるのはムリなわけで、ゲームミュージックに慣れ親しんだ世代とそうじゃない世代は、同じ曲でも感覚での捉え方が全然違うかもしれないと、最近になって実感しはじめました。
初音ミクも、世代によって想い出を含めた脳内補正感が、全然違う可能性もあるんですね。
こういったことは研究されてるのか、気になる所ではあります。
話が脱線しましたが、
なにより未来への希望を歌った、楽しいSF小説。
個人的に、ぜひオススメしたい一冊です。
ちなみに、
表紙の子は初音ミクではありません(笑)
http://www.4gamer.net/games/115/G011590/20120316029/
【みんなの力で宇宙を目指す。「放課後ライトノベル」第84回は『南極点のピアピア動画』で明るく前向きな未来に思いを馳せてみませんか? 】